求人広告の変遷 ~世界最古の求人広告から考える~

Webテクノロジーの進歩、スマートフォンの普及などに伴い、いまや採用手法は激変しています。常に進化を遂げる採用手法ですが、今回はその変遷をたどるとともに、世界最古と言われる求人広告から、求人の変わること・変わらないことを考えていきたいと思います。

<目次>

1.年代で見る採用手法の変遷
   ・~1970年代 新聞広告期
   ・1980年代  有料雑誌期
   ・1990年代  インターネット、フリーペーパー黎明期
   ・2000年代  インターネットメディア期
   ・2010年代  スマートフォン期

2.世界最古の求人広告「南極探検隊隊員場募集」

3.求人広告の変わること変わらないこと

1.年代で見る採用手法の変遷

流通の在り方やテクノロジーの進化、社会での情報コミュニケーションや生活様式の変化などにあわせ、求人手法もつねに変わってきました。その変化を年代ごとに見ていきたいと思います。

~1970年代 新聞広告期

いわゆる「転職」が今ほどに活発ではなかった時代、その主流は「縁故」採用や職業安定所をつうじてのことでした。新聞のいわゆる3行広告、またその新聞への折り込みチラシ、という求人活動が新聞発行部数が軒並み上がっていく中で大きな影響力があった時代でした。

1980年代 有料雑誌期

1980年、リクルートは女性向け転職雑誌「とらばーゆ」を創刊します。雑誌媒体での求人広告はそれまでの新聞をはじめとするそれよりも、情報量が多く確保できることが特徴でした。「委細面談」として扱われていたものが、より詳しく具体的に明示することが可能となりました。これが転職者に支持され、転職することを「とらばーゆする」と言うことが流行するようになりました。
 1982年にはアルバイト情報誌「フロムエー」が創刊。転職のみならずアルバイトも雑誌で仕事を探す、という時代に。さらにこの「フロムエー」は「フリーター」という言葉を世に送り出し、1987年には流行語に選ばれるなど、有料求人雑誌はその影響力を高めていきました。

1990年代 インターネット、フリーペーパー黎明期

1980年代に生まれた有料求人広告雑誌が隆盛を極める中、1990年代後半にはまた新たな採用手法の芽が出始めてきました。
 1996年、新卒領域では現在の「リクナビ」の前身となる「RB on the NET」がサービスを開始。さらにその年、現在の「リクナビNEXT」となる「Degital B-ing」がスタートしました。
 一方、1998年にはフリーペーパーである「タウンワーク」が創刊され、駅やコンビニ、スーパーなど多くのところにラックが置かれ始めました。
 インターネットやフリーペーパー。無料で情報を取得する、という新しい価値観が生まれ始めた時代でした。

2000年代 インターネットメディア期

インターネットの普及率、1999年にはまだ21.4%であったものが、2010年には78.2%と飛躍的伸長。2000年にはGoogleが日本語の検索サービスを始めるなど、インターネットが当たり前になってきたこの時代、求人もまさにこのインターネットを中心に変化をしてきました。
 それまで転職者は企業からの情報を主体的に取得し、選び、応募をする、というものでしたが、インターネットメディアが主流となり、いわゆる個人情報を登録しオファーを待つ、という新しい採用手法も登場してきました。

2010年代 スマートフォン期

2008年に「iPhone 3G」が日本で発売、また、09年にはNTTドコモが初のAndroid搭載端末を発表し、2010年代はスマートフォンが一気に普及する時代となりました。この画期的なデバイスの登場により転職やアルバイト探しもスマホが主流となりました。2009年にはIndeedが日本でのサービスを開始。2012年にはリクルートグループがこのIndeedを買収し、2010年代後半の転職市場はIndeedを中心に展開されるようになってきました。
また、2008年に「Facebook」「Twitter」、2011年に「Line」がサービスを開始。SNSでのコミュニケーションが一気に広まることとなります。スマホ×SNSという採用手法もたくさん出現してくることとなりました。

2.世界最古の求人広告「南極探検隊隊員場募集」

時代の変遷とともに変化していく求人広告を見てまいりましたが、ここではその時代を一気にさかのぼり、世界最古の求人広告と言われるものを見てみたいと思います。

世界最古の求人広告

 「南極探検隊員募集。求む隊員。至難の旅。わずかな報酬。極寒。暗黒の日々。絶えざる危険。生還の保障はない。成功の暁には名誉と賞賛を得る。 by アーネスト・シャクルトン卿」

1900年、ロンドンの新聞の片隅に掲載されたこの広告。1914年の人類初の南極大陸横断成功に向けた隊員募集のいわゆる「求人広告」でした。
「至難の旅、極寒、暗黒の日々。絶えざる危険。生還の保障はない。」とんでもなく、ネガティブな情報。いまの求人広告では企業が出したくない情報として扱われるようなことを冒頭で大々的に伝えています。そして、「成功の暁には名誉と称賛を得る」というメリット情報。今の常識ではメリットとデメリットのバランスから「これで応募が来るの?」と首をかしげたくなるのではないでしょうか。
 しかし、とても小さな広告でしたが、その内容により5000名もの応募があったそうです。
アーネスト・シャクルトンは南極大陸横断の前に、求人広告でも
成功を収めていたようですね。

求人広告の変わること変わらないこと

変わること

求人広告で必要なことは、「採用したい人」に「応募したい」と思ってもらう情報を「伝える」ことだと考えています。
「採用したい人」達の生活様式が変われば、その情報取得原も変わってきます。そのため、1で見たように、時代とともに様々な手法を用いてその情報が伝わるルートを確立しないといけません。
現在の「採用サイト」や「SNS」を通じたオウンドメディアリクルーティング、これからの5G時代の動画、VR・ARの活用などまた新たな試みを行う必要もあるかもしれません。「採用したい人」がどのような情報入手を行っているか、常にアンテナを立てておく必要があります。

変わらないこと

変わりゆくツール、デバイスで情報を手にした転職者。しかし、「ここで働きたい」と思ってもらう情報を提供する、ということは世界最古の求人広告から現在まで、そして未来も変わらないことであろうと考えられています。
・どんなことにも負けない忍耐力。
・挑戦したいという強い気持ち。
・誰も成し遂げたことがないことをやりたい、という好奇心。
こんな「採用したい人」達にその心を突き動かす情報を提供したのが南極探検隊員募集の成功のポイントであったのではないかと思います。一般的に良いと思われること、ではなく、その「採用したい人」にピンポイントで刺さる情報提供、これこそが過去、現在、未来、に変わらない採用成功のポイントではないでしょうか。

この記事を書いた人

丸山史人

■上級Web解析士■中小企業向けコンサルティング会社を経て2003年に(株)リクルーティング・デザイン入社。東海企業の採用活動を担い2014年業界でいち早く上級ウェブ解析士資格取得。Webを活用した採用ノウハウで大手企業の採用パートナーとして活動中。