求人広告を作成する時に気をつける法律は?第四回『労働時間』について

転職をするときに確認する情報で必ず必要となるもの。
それが「勤務時間」です。

始業は何時からかな?
1日何時間勤務したらよいのかな?
休憩時間は何分あるの?
残業はどれくらい?
などなど、気になることばかりです。
ここではそんな「時間」についての考え方や求人広告に記載する際のポイントを簡単に説明します。
ぜひ読んで活かしてください。

労働基準法で定められた労働時間とは?

労働基準法とは、労働者の労働条件の最低基準を定めた法律です。労働者は、使用者との間で自由に労働条件を定めることができますが、その場合でも、労働基準法で定められた最低基準を下回ることはできません。

労働基準法の目的は、労働者の労働条件を向上させ、労働者の人権を保護することです。具体的には、以下の目的を達成することを目的としています。

  • 労働者の安全と健康を守る
  • 労働者が適切な労働時間と賃金で働けるようにする
  • 労働者が休息と休暇を取得できるようにする
  • 労働者が労働契約を自由に結ぶことができるようにする

では、この中で時間はどのように定められているかを抜粋してみました。

  • 原則として、1日8時間、1週間40時間
  • 1日6時間を超えて労働する場合は45分以上、1日8時間を超えて労働する場合は、60分以上の休憩を与える
  • 1週間に1日または4週に4日の休日を与える
    となります。

難しい部分は休憩時間でしょうか。
1日8時間だけの労働であれば45分の休憩を与えれば良いのですが、1分でも「超えて」しまえば60分の休憩を与えなければいけないという意味になります。

勤務時間でありがちなNG表現

当然ですが、求人原稿では実態と異なる勤務時間を表記するのはNGです。

例えば、

  • 指揮命令の元での作業の準備や片付け、店の清掃
  • 制服や作業服の着用
  • 会社から現場への行き帰り
  • 勉強会や研修への参加

などが義務付けられている場合は勤務時間となりますので、それに沿った時間を明記し、早出・残業などにあたる場合は割増賃金を支払う必要があります。そのため、早出や残業、当直などがあれば必ず明記しておきましょう。

<適している表記例>
残業や早出がある場合は
9:00~18:00(実働8時間)
※1日1~2時間程度早出・残業あり

宿直がある場合は
9:00~18:00、12:00~21:00(シフト制)
※月に2回程度宿直あり(22:00~翌9:00)

<NG表記例>
休憩時間がないためNG
9:00~17:00(実働8時間)
正しくは9:00~18:00(実働8時間)など

毎朝朝礼が8:30~ある場合
9:00~18:00
正しくは8:30~18:00もしくは9:00~18:00(毎朝8:30より朝礼あり)

カスタマーにとって残業の頻度や時間など、勤務時間の実態は入社してからでないとわかりにくいもの。勤務時間帯が複数ある場合や、取り方が決まっているとき、アルバイトやパートでは必須条件があればそれがわかるように表記しましょう。トラブルにならないよう勤務時間を正しく伝えることが大切です。

勤務時間の用語について

勤務時間とは?
 就業規則や社内規定、雇用契約書で定められた始業時刻から就業時刻までを指します。
所定労働時間とは?
 上記勤務時間から休憩時間を除いたもの
法定労働時間とは?
 労働基準法で定められている労働時間です。休憩時間を除き、上限は原則「1日8時間、1週間40時間」。
拘束時間とは
 実働労働時間と休憩時間、残業時間を足した時間です。
実働時間とは?
 休憩を除いた、実際に働く時間のことです。早出や残業時間があれば長くなります。拘束時間-休憩時間や所定労働時間+早出・残業時間と同じです。
休憩時間とは?
 1日の労働時間の中で「業務を離れて自由に使える時間」のこと。
早出・残業とは
 所定労働時間外の労働のことを指します。法定労働時間を超えた労働は法定時間外労働または時間外労働と呼ばれ、割増賃金を時間単位で払う必要があります。

特別な勤務時間を採用している場合

時間外勤務や特別な働き方をしている場合は、それらも時間と一緒に表記する必要があります。カスタマーにとってもわかりにくいしくみのため、できる限り丁寧に表記しましょう。

例えば

変形労働時間制(1年単位・1ヶ月単位・週単位の3種類あります)

年・月・週などの単位で法定労働時間を配分し、業務の繁閑に合わせて勤務時間を調整するしくみ。
表記例/月単位の変形労働時間制 月間総労働時間160~176時間など

フレックスタイム制

1~3ヶ月以内の清算期間における総労働時間をあらかじめ定めておき、労働者がその枠内で始業と終業の時間を自分で決定できるしくみ。
表記例/フレックスタイム制 標準労働時間8時間※コアタイム11:00~16:00な

事業場外労働時間制

直行直帰などの理由により事業場外での業務の労働時間が算定できないため、所定労働時間働いたとみなすしくみ。法定労働時間(1日8時間/週40時間)を超える労働が必要な場合は労使協定を結び、労働基準監督署に届ける必要もあります。
表記例/事業場外労働時間制みなし9時間など

裁量労働制

労働時間の配分を労働者に委ねるが、協定や決議により定めた時間を働いたとみなすしくみ。事業場外労働時間制にも似ていますが、こちらは厚生労働省に定められた専門業務の他、指針で定められた企画職に適用されます。こちらも労働基準監督署に届ける必要があります。
表記例/専門業務型裁量労働制1日8時間など

まとめ

いかがでしたか?今回は労働時間の表記ポイントについて紹介してきました。

勤務時間は応募を決める上で非常に大切な条件の一つです。求人広告に掲載された勤務時間と実際の勤務時間が異なる場合は、勤務を継続することが難しくなるなど、非常に大きなトラブルにもつながるため、正しい情報をわかりやすく伝えるようにしてください。

この記事を書いた人

畠山隆之

「関わる人と企業を少しでも幸せに。」
リクルートメディアの入稿管理を経て、求人広告制作や原稿の品質管理を担当しています。