Googleアナリティクスで採用サイト改善 ~その前に~

Googleアナリティクスでデータを取得してサイトの解析、改善…も大切ですが、実はその前にできること、やっておくべきことがあります。データを活用することは有効な改善手段ですが、あくまで手段の1つ。もっと言えば、データをより有効に使うためには、その前にやっておくべきことがあります。

1.サイトはユーザーが使うもの

これは採用サイトに限った話ではありませんが、ウェブサイトはユーザーが使うもの。採用サイトで言えば、求職者が使うものです。この大原則に立てば、求職者目線でサイトを見ることは当たり前のように思えますが、これが意外と抜け落ちがちなのも事実です。
データを取得して解析する前に、まずは自社の採用サイトを求職者目線で見てみると、意外と多くの気付きがあるものです。「そう言われても、ウェブサイトに詳しくないからどこをどう見れば良いのかわからない」と思われるかもしれませんが、詳しくないことは全く問題ではありません。なぜなら求職者の大半はサイトのつくりについて詳しくはないからです。あえて言えば、シロウト目線こそが重要とも言えます。むしろここで重要なのは様々な人が求職者の気持ちになって実際に使ってみること。人事担当者だけでなく、普段は採用活動に関わっていない人も含め、なるべくたくさんの人に使ってもらうほど良いと言えます。これも求職者目線で考えれば当たり前のこと。サイトを見る求職者は1人ではありませんから。

ただし、気を付けるべきことが1点。多くの人から意見収集を行うと、それを全てサイトに反映しようとしがちですが、それは避けるべきことであり、そもそも現実的に不可能なことでもあります。視点が違えば求めること、感じることも当然のように変わります。そのすべてを一緒にするというのは、料理で言えばあらゆる具材と味付けを全て混ぜるようなもの。これをサイトでやろうとすれば、収拾がつかない状態になり、誰にとっても使いにくいサイトが出来上がるためです。元々、求職者にとって使いやすいサイトにしようと始めたことが、全てを反映しようとすると、逆に極めて使いにくいサイトになってしまっては元も子もありません。そのため意見を募ったからと言って、必ずしも採用されるとは限らないことを事前に伝えた上でご協力いただくよう、ご注意ください。
また、社内でこのチェックを行うと必ずと言って良いほど出てくる意見が「もっとこういう内容を打ち出すべき」という内容に関する意見です。もちろん自社の採用についていただく意見なので、その意見自体はとても貴重なものですが、このチェックで見て欲しいのは、あくまで使い勝手です。内容については、また異なる考え方で決めていくべきものなので、ここでは一旦置いておき、使い勝手の改善だけを進めます。

2.使い勝手に関する意見の重要さ

・実際に出てくる声

サイトを使ってみた感想を募ると、例えば次のような意見が出てきます。

・どのページから見ればよいのかわからない
・いちいちトップページに戻らないといけないのがめんどくさい
・応募ボタンが見つけにくい
・フォームが入力しにくい
・表示されない

このように使い勝手のチェックまでなら、サイトに関する専門的な知識がなくても充分に可能です。そしてこれらは、サイトの内容そのものとは関係ないですが、サイトの成果には直結する極めて重要な意見です。データ解析によってどれだけコンテンツに工夫を加えて改善しても、そもそも使い勝手が悪いサイトのままだと、求職者が使いにくさを理由に離脱してしまいます。その状態では、どれだけ労力をかけても効果を得ることは難しいと言えます。

ただ、前述したように全ての意見を取り入れることは現実的に不可能とも言えます。
例えば、文字が小さくて読めないという意見があれば、一方で文字が大きいと読みにくいという意見もあります。これはどちらが正しいという話では全くないですし、双方を取り入れることは不可能です。同じようにボタンが大き過ぎて押しにくい人もいれば、同じ大きさでも小さくて押しにくいという人もいます。端末の画面の大きさによっても使いやすさは変わる上、時には古い機種やPCで確認しようとするとうまく表示されないことすらあります。これも同じく、世に存在する全ての端末に対応することは現実的ではありません。またフォームの入力についても、入力形式への慣れによって入力のしやすさは異なります。
では、どうすればよいのか。そこには基準が必要です。

・選択する基準を決める

全ての意見は自分を基準に発信されてくるので、取り入れる意見を決めるには基準が必要になります。
この基準は採用サイトの考え方に沿った上で、あくまで求職者目線で考えますが、結局のところ「どんな人に見てほしいのか」によります。
誰もが使いやすいサイトは存在しないので、ある意味、対象として想定しない求職者も生まれてしまいますが、それは採用に限らずどんなサイトでも、もっと言えばサイトに限らず多くの商品やサービスでも同じこと。極端な話、例えば化粧品のサイトは男性を閲覧者の対象としては考えられてはいませんし、子供向けのサイトは大人を閲覧の対象とはしていません。
同じように、スマホの操作に慣れた人を対象にするのであれば、ユーザー側の慣れによって感覚で操作してもらえるスマホならではの部分も活かせますが、慣れていない人を対象にするのなら、丁寧に導線を示して誘導する必要があります。例えばメニュー表示の仕様でも、慣れている人向けによくあるハンバーガーボタンにするのか、慣れていない人向けにスペースを使って「menu」と文字を表示させるかの選択で、使えるスペースや見せ方は変わり、そのバランスを取るためにページ内の他の要素に影響することもあります。このように、見てほしい相手を決めることで修正箇所も方法も変わり、それによって影響を受ける部分も変わってきます。見せたい相手を決めてもこの状態なので、相手を決めずにサイトの修正に着手してしまうと、どこまでいってもおかしな部分が残ってしまい、修正に区切りをつけることができなくなるか、ひどくバランスを欠いたページになってしまいます。
だからこそ、誰の視点で見て判断するのかを最初に決める必要があります。

・変えたら、もう一度使ってみる

そしてもう1つ重要な工程が、変えたら実際に使ってみること。使いにくいと感じた実感を元に、使いやすくなるであろうという予想で加えた修正が本当に使いやすくなったかどうかは、実際に使ってみるまでわかりません。意外と実際にやってみると前の方が良かったとなることも少なくありません。また、登録型の仕事や短期の案件が複数掲載されたサイトの場合、定期的に訪問してくれる固定のユーザーがいる可能性があります。その場合は、使い勝手を変えることで、そのユーザーが離れる可能性もあります。仮に意見が上がったとしても、変えるべきか、変えないでおくべきかはサイト毎に慎重に判断する必要があります。


いかがでしょうか。サイト改善と言ってもデータの取得・分析・解析だけが手がかりではありません。そしてここに挙げた内容は、実はどれもデータでは取得できない要素ばかりです。サイトは全ての土台となる重要な存在。だからこそ、データだけに頼らず、改善を考える際にはトータルで見直さないと逆効果になってしまうこともあります。

社内から意見の募り方、取り上げる意見の決め方、判断軸の立て方などデータによらない部分でも採用サイトの改善に関するご相談がありましたら、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

広部貴司

リクルート発行の求人広告制作を経て、2014年上級ウェブ解析士を取得。以降、特定の商品に限ることなく、リアルもウェブもペイドメディアもオウンドメディアも含めてトータルで最適な採用手法の提案を心掛けています。