最新!2020年9月末「特定技能」在留外国人数から見る現状と課題

2019年4月に新たに登場した在留資格「特定技能」制度は、新型コロナウィルスの影響から、海外からの入国が止まってしまったこともあって、当初の想定以上に進んでいないと言えます。

特定技能に関するデータ(2020年12月)

法務省の発表では、2020年9月末時点における「特定技能」で在留している外国人材の数が、2020年11月20日、最新データとして発表されました。

それによりますと、「特定技能」の総数は、8,769人。3ヵ月前の6月末が5,950人から、2,819人増えました。月日を重ねるたびに増えていってはいますが、この人数は決して当初の想定に比べれば、決して多い数ではありません。政府が初年度となる2019年度に想定した特定技能人数は4万7,550人。ところが、20年3月末時点で3,987人と想定の1割以下に留まり、そこから半年経った9月末集計で5,000人弱増えたものの、1年半経過した現在でも、初年度想定人数の2割にも達していないのです。

問題はどこにあるのかは、後段で触れることとして、まずは、この20年9月末の集計データを、もう少し詳細に見ていきましょう。

国別・分野別・年齢別の考察

国別では、圧倒的にベトナムが多く、5,341人で全体の約6割(シェア60.9%)を占めます。次いで、中国が826人(同9.4%)、インドネシア775人(同8.8%)でした。

分野別(業種)で最も多かったのは、「飲食料品製造」で3,167人(全体の36.1%)、次いで「農業」1,306人(同14.9%)、「外食」859人(同9.8%)となりました。

ちなみに、特定技能人材の受け入れ人数を19年度から5年間で6万人と最も多く見込んでいる「介護」分野は、たった343人とまだまだ少ないのが現状です。

また、年齢別にみると、18~29歳、つまり20代中心の若手人材は、6,114人と約7割を占め、30代は2,423人と約3割弱、40代が222人となっています。

特定技能の現状

日本の人手不足の解消を目的に設置された在留資格である「特定技能」ですが、この特定技能で日本に在留するには、大きく2つのルートがあります。

ひとつは、特定技能14分野でそれぞれ実施する「特定技能試験」と「日本語能力試験」のN4以上に合格し、日本企業の内定を得ること。
もうひとつは、技能実習を2号(1号からの合計3年間)を良好に修了し、同分野で働く企業の内定がもらえれば、「特定技能」に技能実習生から無試験でスイッチできる、というものです。

このたび、2020年9月末の「特定技能」外国人8,768人のうち、試験ルートは全体の15%にあたる1,326人で、「特定技能」のほとんどが技能実習生からのスイッチ者であり全体の84%にあたる7,348人となっています。
なぜ、試験ルート者が少ないのか。それは、特定技能者としての資格を得るための「特定技能試験」と「日本語能力試験」が、国内外とも、頻度よく実施されていないことが一番の原因だと考えられます。

繰り返しになりますが、「特定技能」制度は日本の人材不足を補うための施策であり、コロナで海外からの入国が難しい中で、最もターゲットすべきなのは、国内にいる留学生の試験合格組です。
国内にいる留学生が卒業後もそのまま日本に在留して、様々な仕事に就いてもらうためには、特定技能試験や日本語能力試験を頻度よく行うべきなのですが、特定技能試験は、「介護」「農業」は全国主要都市でほぼ毎日実施しているものの、「外食」「宿泊」「飲食料品製造」などは、2~3ヵ月に1度のタイミングであり、申し込み期間が短く、しかも受検は抽選や先着順なので、その分野で働きたいという意欲や希望がありながらも、試験さえ受けられない現状があります。

また、国内で特定技能認定を得られる日本語能力試験は、JLPTしかなく、そもそもこのJLPT試験は例年でも7月と12月の年に2回しかないのですが、2020年はコロナの影響で7月試験が無くなってしまったため、来る12月6日に行われる試験のワンチャンスしかないのです。外国人が日本語力を測定する日本語検定は、J-TESTや日本語NATテストなど、10種類ほど行われているのですが、国内検定で特定技能認定を得られるのはJLPTだけと決められており、在日していて日本で働きたい留学生にとっても、また、日本の生活経験がある留学生を雇用したい日本企業にとっても、改善してほしい大きな課題となっているのです。

今年は、大学や専門学校を来春21年3月に卒業する留学生の内定が、11月になっても例年のようになかなか決まらないという声をたくさん聞きます。弊社のような人材紹介会社も、留学生のみなさんの就職先企業を探しに行くのですが、先の見えない中での企業様の採用意欲は押しなべて低く、紹介先企業も決して多くはないのが現状です。

今後に向けて

新型コロナの第3波が押し寄せる中、「GO TO キャンペーン」の運用も見直しが迫られ、ますます雇用の創出には時間が掛かりそうですが、日本の労働力人口の将来を構造的に捉えれば、人材不足の課題はいずれやってくるものであり、「介護」や「サービス業」などの業態については、テクノロジーの進化だけで補えるものではなく、「外国人雇用」は、その手段として必然の策であるといえます。

人手不足解消の大きな戦略である「特定技能」外国人を数多く輩出し、日本で活躍してもらえる環境や風土づくりを整えることが必要だと考えます。そのためにも、日本全国各地で、特定技能の各分野の試験を頻度高く実施すること、そして、日本語能力を測定する検定試験の種類を増やして、受検の機会を増やすことが、将来の日本を支える外国人の雇用創出に繋がるのです。

コロナ禍にあって、母国に帰ることができない外国人も多く、特定活動ビザで日本の在留を延長している外国人にとっても、ある意味、そのまま日本で働くという選択肢を提供することに繋がります。

技能実習生として多くのベトナム人が来日し、彼らの多くが、そのまま特定技能にスイッチして日本で活躍しています。
海外から新たな人材を獲得するために、コロナ対策がさらに強化され、日本国内にコロナを持ち込まない水際対策を万全にしつつも、インドネシア、ネパール、ミャンマーをはじめ、アジア諸国から新たな人材を呼び寄せ、日本の未来を支えてくれる制度づくりが望まれます。

この記事を書いた人

夏苅雅貴

人材領域に携わって約25年。現在は、株式会社リクルーティング・デザイン海外人材エージェント事業部の責任者として、日本で働きたい外国人の支援をしています。国家資格キャリアコンサルタント。