介護業界における外国人雇用

私たちリクルーティング・デザインは、外国人材の紹介を行うにあたり、特に介護業界に力を入れています。
これは、慢性的な人手不足に悩む介護業界の現状を打開するために打ち出された国家戦略とも合致しており、弊社がその一翼を担うことで、介護施設様の課題解決の一助となれるものと考えています。
そこで、ここでは介護施設様が外国人を雇用する際のポイントをまとめていきます。

介護業界の現状

少子高齢化にあえぐ日本では、多くの分野で人手不足が問題となってきています。中でも、その課題が強く浮き彫りにされている業界が、介護業界といわれています。 厚生労働省の『一般職業紹介状況』によれば、全業種平均値1.08に対して、介護サービスに絞った場合3.37という数字が算出されます(2020年1月~12月の平均値)。全体平均の約3倍の人手不足というこの現状を打破すべく期待されているのが、外国人労働者です。

外国人が介護業界で働けるビザ

1.在留資格「EPA」(介護福祉士候補者)

在留資格「EPA」は、2008年に始まりました。
日本がインドネシア・フィリピン・ベトナムの3ヶ国とそれぞれ結んでいる経済連携協定の一環として、運営されています。彼らは、介護福祉士の資格取得を目的として来日します。資格を取得できれば、晴れて日本で介護士として働くことができますが、EPAのうちは、あくまで教育目的での在日となります。4年の在留期間内に介護福祉士試験に合格する必要がありますが、日本人も受験する試験の合格率が70%程度であることを考えると、外国人にとってはハードルの高い目標です。

2.技能実習「介護」

30年以上前から存在する技能実習の制度ですが、介護業界がその対象となったのは、4年前の2017年のことです。
国際協力活動の一環として行われており、「研修」という名目で来日した外国人が、日本で業務に携わりながら技術を身につけ、母国でその技術を活かす、という制度です。したがって、最長5年の在留期間が満了すると、母国に帰国しなければなりません。

3.在留資格「介護」

「介護」のビザも2017年に始まりました。
これは、教育・研修目的であるEPAや技能実習とは違い、純粋に就労を目的としています。高度な介護の専門スキルを持った人材は、介護施設に雇用され、介護職員として働くことができます。ただし、このビザを取得するための要件として、介護福祉士の資格を持っていることが必須で、そのハードルの高さからこのビザで在留している外国人は2020年12月末時点で1,714名しかいないようです。そのかわり、このビザを取得できれば、日本国内に家族を呼んだり、永住権の獲得に近づいたりと、大きなメリットがあります。

4.特定技能「介護」

最後に紹介する特定技能「介護」のビザは、2019年にスタートしました。
教育目的ではなく就労を目的としているため、幅広い仕事を任せることができ、「介護」ビザのように国家資格の取得までは求めていないという点で人材を確保しやすい、というメリットがあります。介護現場の「人材不足を補うための、即戦力となる労働力」を確保する制度として、注目を浴びています。即戦力として期待されるため、特定技能「介護」で働く外国人は、現場の仕事に対応できるためのスキルと日本語コミュニケーション力は、最低限のレベルで求められます。

特定技能「介護」は、これまでの介護業界にまつわる在留資格(EPA、技能実習、介護)の問題点を補う制度設計がなされており、今後の外国人雇用において注目されている在留資格です。従ってここからは、この特定技能の制度に絞って、話を進めていくことにします。

特定技能「介護」

申請人の要件

外国人が特定技能「介護」で働くためには、以下4種類の方法が用意されています。

1.規定の試験に合格して要件を満たす
2.技能実習で介護の業務に3年間従事する
3.EPA介護福祉士候補者として4年間の在留期間を全うする
4.介護福祉士養成施設を修了する

この中で、現在、特定技能「介護」を取得するための最もオーソドックスな方法は、1の試験に合格する方法です。この方法では、実務経験等は不要となるため、介護を専門的に学んでいない留学生にとって有効な手立てとなります。

これには、技能試験と日本語能力試験の2種類に合格する必要があります。技能試験は、さらに介護の専門スキルを問う「介護技能試験」と、介護の仕事で頻出する専門用語を問う「介護日本語試験」があります。これら2つの試験にプラスして、一般的な日本語能力検定の合格が必要ということです。つまり、合計3種類の試験に合格することが必須となってきます。

弊社にご登録いただく外国人留学生にも、これらの試験申込や学習のサポートを積極的に行っています。2021年7月現在では、彼らのうち20名以上の合格者(留学生)が、これらの要件を備えた状態で紹介可能な候補者として求人票を待っています。

受入れ企業の要件

外国人にビザ申請のための要件が設定されているのと同様に、彼らを受け入れる介護施設にも、一定の要件が存在します。つまり、この要件を満たさない介護施設は、特定技能労働者を受け入れることができないこととなります。

特に、特定技能労働者を受け入れる法人には、法令遵守事項が厳しく見られます。具体的には、労働基準法の遵守・社会保険の加入・納税などが挙げられます。言われてみれば当然の義務ばかりですが、だからこそ、これらを怠ると「受け入れる側に問題がある」というレッテルが貼られてしまいます。

また、介護施設の場合、業態によっても特定技能外国人を受け入れられない場合があります。
受け入れ可能な業態は、

・介護保険適用事業所
・介護福祉士国家試験の受験資格認定において、実務経験として認められる事業所

でなければなりません。

ここから、例えばサービス付き高齢者向け住宅や訪問介護などは、特定技能外国人の受入れは不可となります。詳細は、以下に事業カテゴリー別にまとめました。該当するカテゴリーをクリックして、より細かい整理をご確認ください。(厚生労働省「『介護職種について外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則に規定する特定の職種及び作業に特有の事情に鑑みて事業所管大臣が定める基準等』について」より)


対象施設

【介護福祉士国家試験の受験資格要件において「介護」の実務経験として認める施設のうち、現行制度において存在するものについて、訪問介護等の訪問系サービスを対象外とした形で整理をしたもの】
(背景白:対象 背景緑:一部対象  背景灰色:対象外又は現行制度において存在しない。

児童福祉法関係の施設・事業
知的障害児施設
自閉症児施設
知的障害児通園施設
盲児施設
ろうあ児施設
難聴幼児通園施設
肢体不自由児施設
肢体不自由児通園施設
肢体不自由児療護施設
重症心身障害児施設
重症心身障害児(者)通園事業
肢体不自由児施設又は重症心身障害児施設の委託を受けた指定医療機関(国立高度専門医療研究センター及び独立行政法人国立病院機構の設置する医療機関であって厚生労働大臣の指定するもの)
児童発達支援
放課後等デイサービス
障害児入所施設
児童発達支援センター
居宅訪問型児童発達支援
保育所等訪問支援
障害者総合支援法関係の施設・事業
短期入所
障害者支援施設
療養介護
生活介護
児童デイサービス
共同生活介護(ケアホーム)
共同生活援助(グループホーム)(外部サービス利用型を除く)
自立訓練
就労移行支援
就労継続支援
知的障害者援護施設(知的障害者更生施設・知的障害者授産施設・知的障害者通勤寮・知的障害者福祉工場)
身体障害者更生援護施設(身体障害者更生施設・身体障害者療護施設・身体障害者授産施設・身体障害者福祉工場)
福祉ホーム
身体障害者自立支援
日中一時支援
生活サポート
経過的デイサービス事業
訪問入浴サービス
地域活動支援センター
精神障害者社会復帰施設(精神障害者生活訓練施設・精神障害者授産施設・精神障害者福祉工場)
在宅重度障害者通所援護事業(日本身体障害者団体連合会から助成を受けている期間に限る)
知的障害者通所援護事業 (全日本手をつなぐ育成会から助成を受けている期間に限る)
居宅介護
重度訪問介護
行動援護
同行援護
移動支援事業
老人福祉法・介護保険法関係の施設・事業
第1号通所事業
老人デイサービスセンター
指定通所介護
指定地域密着型通所介護(指定療養通所介護を含む)
指定認知症対応型通所介護
指定介護予防認知症対応型通所介護
老人短期入所施設
指定短期入所生活介護
指定介護予防短期入所生活介護
養護老人ホーム※1
特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設)
軽費老人ホーム※1
ケアハウス※1
有料老人ホーム※1
指定小規模多機能型居宅介護※2
指定介護予防小規模多機能型居宅介護※2
指定看護小規模多機能型居宅介護※2
指定訪問入浴介護
指定介護予防訪問入浴介護
指定認知症対応型共同生活介護
指定介護予防認知症対応型共同生活介護
介護老人保健施設
介護医療院
指定通所リハビリテーション
指定介護予防通所リハビリテーション
指定短期入所療養介護
指定介護予防短期入所療養介護
指定特定施設入居者生活介護
指定介護予防特定施設入居者生活介護
指定地域密着型特定施設入居者生活介護
サービス付き高齢者向け住宅※3
第1号訪問事業
指定訪問介護
指定介護予防訪問介護
指定夜間対応型訪問介護
指定定期巡回・随時対応型訪問介護看護
指定訪問看護
指定介護予防訪問看護
訪問看護事業
※1 特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型特定施設入居者生活介護を除く。)、介護予防特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型介護予防特定施設入居者生活介護を除く。)、地域密着型特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型地域密着型特定施設入居者生活介護を除く。)を行う施設を対象とする。
※2 訪問系サービスに従事することは除く。
※3 有料老人ホームに該当する場合は、有料老人ホームとして要件を満たす施設を対象とする。
生活保護法関係の施設
救護施設
更生施設
その他の社会福祉施設等
地域福祉センター
隣保館デイサービス事業
独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園
ハンセン病療養所
原子爆弾被爆者養護ホーム
原子爆弾被爆者デイサービス事業
原子爆弾被爆者ショートステイ事業
労災特別介護施設
原爆被爆者家庭奉仕員派遣事業
家政婦紹介所(個人の家庭において、介護等の業務を行なう場合に限る)
病院又は診療所
病院
診療所

他にも、介護分野においては、特定技能外国人の人数枠を、「事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数を上限とする」などの規制にも注意が必要です。

業務範囲

特定技能「介護」の下で行える業務は、身体介護等(入浴、食事、排せつ、整容、衣服着脱、移動の介助等)のほか、これに付随する支援業務レクリエーションの実施、機能訓練の補助等、多岐にわたります。掲示物の管理のような関連業務も許されますが、もっぱらそれだけに従事することは認められません。

試験概要

介護分野の場合、特定技能の試験は、日本国内で毎日実施されています。テストセンターで空いているコンピューターを予約して、随時受験をします。

サンプル問題やテキストは、厚労省のホームページでダウンロードすることができます。

実際の問題は、英語・ベトナム語・インドネシア語・クメール語・ネパール語・ビルマ語・中国語・タイ語に翻訳されており、受験者の母国語やそれに近い言語で受験をすることとなります。当然ながら、上述のテキストも、日本語を含めて9言語に対応しています。ただ、日本語で作成した問題を機械翻訳で直訳しているだけのため、ネイティブの方には意味が理解しづらい問題が出てくることもあるようです。

むすび

これまで、EPAは介護福祉士試験の合格率が芳しくない、技能実習は適正な労務管理ができない、「介護」ビザは取得要件である介護福祉士試験合格が難しく資格者が増えない、という状況で、介護業界の外国人雇用対策は課題を抱えていました。それらに対して、「取得が容易な就労ビザ」である特定技能「介護」のビザは、新たな人手不足解消手段として、期待されています。事実、制度の導入から2年が経過して、既に「介護」ビザ以上の外国人が、特定技能「介護」のビザを取得しています。

今後、外国人従業員の導入を考えている介護施設の方々は、この特定技能「介護」の有効活用をご検討されてみてはいかがでしょうか?

特定技能「介護」の制度や活用方法など、より詳細にお聞きになりたい方は、ぜひとも弊社リクルーティング・デザインのグローバルリンク事業部まで、お問合せください。些細なご相談から弊社の登録人材のご紹介まで、何でもお伺い致します。

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この記事を書いた人

坂野雅弘

RDグローバルリンク事業部で主に特定技能試験のサポートやYouTube動画をメインに企業様と求職者がより良い形で繋がれるように情報を発信していきます。