2019年末時点で、日本に住む在留外国人は293万3,137人で、過去最高の数字となっています。そのうち、在留資格「技術・人文知識・国際業務」を取得している外国人の数は27万1,999人で、実に9.3%を占めます。2018年末の数字が18万9,273人だったので、この在留資格を持つ外国人は、1年で約44%も増加したことになります。
そんな「技術・人文知識・国際業務」とはどのような在留資格なのでしょうか。ここでは、技術・人文知識・国際業務それぞれに該当する業務と職種、また申請に必要な手続きについて紹介します。外国人の採用を考えている採用担当の方は、ぜひ参考にしてください。
技人国(ぎじんこく)
外国人が日本で企業等に勤務して働く場合に最も多いのが「技術・人文知識・国際業務」の在留資格です。事実、日本に留学する外国人留学生は、卒業後にこの「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取って就職することがほとんどで、日本の大学を卒業して就職を果たした留学生の90%以上が「技術・人文知識・国際業務」資格での滞在となっています。それぞれの頭文字を取って「技人国(ぎじんこく)」と呼ぶことがあります。
技人国は、日本で外国人が自然科学や人文科学の知識が求められる仕事に就く場合に取得できる在留資格です。以前は「技術」と「人文知識・国際業務」に分けられていましたが、2015年の入管法改正により区分が廃止されました。
法務省によると、技人国の在留資格に該当する活動は、前提として、学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的技術又は知識を必要とする活動又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性に基づく一定水準以上の専門的能力を必要とする活動でなければいけません。
つまり、簡単にいうと、「技人国ビザ」は、主に大学等を卒業した外国人が日本の会社に就職する際に取得できるビザで、ITや製造業での技術者や通訳、海外営業などのオフィスワーカーとして日本で働くために必要な在留資格といえます。
以下、「技術」「人文知識」「国際業務」のそれぞれについて、事例を交えながら簡単に紹介していきます。
技術とは
法務省のホームページでは、技術とは、「理学,工学その他の自然科学の分野」であると記載されています。つまり、システムエンジニア・プログラマー・機械系エンジニア・電気系エンジニアなどの業務が想定されます。要するに、理系の職種が該当することになります。
技術の業務の許可事例としては、例えば「大学工学部を卒業した外国人が、給与(月額)23万円で雇用され、電機製品の製造を業務内容とする企業で、技術開発業務に従事する場合」などがあります。
人文知識とは
人文知識とは、「法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務」と記載されています。つまり、主に文系の業務になりますが、例えば「営業・企画・広報宣伝・経理などの事務職」を行う業務が想定されています。
人文知識での許可事例としては、例えば「大学法学部を卒業した外国人が、給与(月額)19万円で雇用され、法律事務所において、弁護士補助業務に従事する場合」などがあります。
国際業務とは
国際業務とは、「外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動」と記載されています。
つまり、「通訳・翻訳・語学学校の教師・デザイナー」などを行う業務が想定されています。
国際業務の許可事例としては、例えば、「大学教育学部を卒業した外国人が、給与(月額)17万円で雇用され、語学指導を業務内容とする企業において、英会話講師業務に従事する場合」などがあります。
このように、「技人国」の在留資格で外国人を雇用する場合、従事する予定の業務によって、「技術」、「人文知識」「国際業務」のどれに当てはまるか、事前に考慮に入れて、申請をしなければなりません。法務省のホームページでは、様々な典型例が掲載されていますので、この見極めのご参考にされると良いでしょう。
また、技人国の在留資格は、申請をすれば必ず許可が下りるというものでもなく、申請者である外国人本人と、雇用主である企業側の要件がすべてクリアした場合に、在留資格が発給されることとなります。以下、それぞれに課される要件を簡単にまとめたので、ご参考にしてください。
外国人の要件
(a)専攻と職務内容の関連性
外国人が培ってきたスキルを業務に活かす趣旨から、従事しようとする業務に関連性のある専攻で大学を卒業したことが基本的に必要となります。日本の専門学校や大学に留学した場合も同様ですが、日本語学校卒業では、このビザを取得することはできません。
<例> 経営学専攻で大学を卒業した外国人が、マーケティング職に就く
(b)本人の経歴
(a)と同様の趣旨から、従事しようとする業務と同様の業務についての実務経験を有することで、(a)の学歴要件を補うこともできます。
<例>本国でITエンジニアをしていた外国人が、日本でSEとして就職する
(c)本人の素行
法律違反を犯していないことも必須要件となります。
これは、犯罪歴がないというものだけでなく、日本に留学したのに資格外活動として許可されている28時間という就労時間を超えてアルバイトをしていた、という場合も厳しく確認されます。
※これは、技人国だけでなく、どのビザを申請するときも、注意が必要な要件となります。
企業の要件
(d)受入れ企業の経営状況
受入れ企業に外国人を安定的・継続的に雇うだけの財務基盤があるかが見られます。このため、企業群を4つのカテゴリーに分けられ、カテゴリーごとに提出書類が変わりますが、直近の決算書類や事業計画書の提出は必須です。
カテゴリーの分類に関しては、法務省のホームページをご参照ください。
(e) 雇用の必要性・業務量
受入れ企業が本人の職務を活かせる機会を提供できるかが問われます。
技人国ビザで就業する外国人の業務には、「技術や知識などの専門性が必要な業務」とされており、その企業で専門的な業務が本当に必要か、外国人がそれだけに従事できるほどの十分な業務量があるか、がポイントとなります。
<例>ホテルの通訳としてネパール人を雇ったが、宿泊客の大半が中国人だった場合、申請が拒否される可能性が高いです。
(f)十分な報酬の支払い
外国人に対して不平等な扱いをしないよう、外国人には日本人と同等以上の報酬が保証されなければいけません。
まとめ
「技人国」の在留資格を取得するには、知識と業務との関連性や企業側の条件など様々な基準を満たす必要があります。外国人を雇用する際には、これらの条件をよく確認し、適切に申請していただくことが肝要です。