採用力とは(1)

採用環境は経済・景気動向の影響を受けます。昨年末からのコロナショックにおいても新規求人件数の大幅な減少や雇用調整による求人倍率の低下など、採用環境に大きな変化が見られます。
しかし、同じ採用環境下でも、実際に採用活動をされる企業においては採用に成功する企業もあれば、失敗する企業もあります。単純な採用環境以外の要素があり、採用の成否に影響を与えています。
その要素は『採用力』と呼ばれ、以下のような公式に整理することができます。

採用力=企業力×労働条件・待遇×採用活動

ここでは具体的に要素を分解しながら見ていきたいと思います。

企業力 = 企業の概要/商品・サービス/イメージ

企業の概要

例えば
・設立年月日、歴史
・資本金
・売上高
・従業員数
・本社所在地
・事業所数
・資産内容
・収益力
・市場シェア
・上場/非上場
・無借金経営 など

商品・サービス

例えば
・商品、サービス内容とその魅力
・営業力、販売力
・製品開発力
・技術力
・研究施設や設備内容
・特許の取得数
・技術者、研究者の内容 など

イメージ

例えば、
・属する業種/業界のイメージ
・安定性
・将来性
・国際性
・社会貢献性
・経営理念、ビジョン
・多角性
・広告、宣伝などのイメージ
・経営トップの人柄、認知度、カリスマ性
・有名な社員 など

■労働条件・待遇 = 職場環境/将来性/賃金・福利厚生

職場環境

例えば、
・仕事内容
・勤務地
・職場の雰囲気
・残業時間の多寡
・IT導入などの業務支援
・教育、研修制度
・人材育成の方針
・転勤の有無
・離職率
・資格取得制度 など

将来性

例えば、
・昇給、昇進のスピード
・昇格、ポストの有無
・将来の想定年収
・描けるキャリアプラン
・新規事業展開
・株式公開の可能性 など

賃金・福利厚生

例えば、
・給与
・賞与
・各種手当
・休日休暇数
・有給休暇の取得率
・PCや携帯電話の貸与
・持ち株制度
・寮、社宅の有無
・福利厚生施設 など

採用ターゲットの目線を考える

「企業力」や「労働条件・待遇」は、「採用活動」における採用ターゲットの属性や志向によって注目すべきポイントは異なります。

例えば、新卒採用/中途採用で考えると
「企業力(企業の概要・イメージ)」
新卒採用:日々の生活において一般消費者として知っている企業や、商品・サービスが好まれる傾向がある
中途採用:一般生活での認知度は高くなくても、業界内での評価やシェアが高い企業は人気がある

というような具合です。

従業員数、事業所数のような企業規模や、売上高など、大きい、多い方が、採用力としては強い要素と言えますが、「採用活動」ごとの採用ターゲット、個人の志向で整理すると、必ずしもそうとは言い切れません。
「大規模の企業」=「安定性がある」ととらえる個人か、「小規模だが、従業員1人あたりの生産性は高い」=「成長性がある」ととらえる個人かの違いがあるように。
採用ターゲットの設定と、目線を考えるとメリットとデメリットは裏腹であり、「採用活動」における広報の仕方、工夫により変化します。

「採用力」をupさせるポイントまとめ

ポイント①

自社の事実や整理された情報をもとに、大局的にみて、何が採用の成否を左右しそうかを分析する

ポイント②

成否を左右する要素のなかで、すぐに改善できるものは何か、また、改善が困難なものは何かを把握する

ポイント③

改善が可能なものには、労力と時間とお金を投資することを考える

「企業力」
多くが企業戦略、経営戦略領域に関わる根底の部分になるので、短期間・単年度での改善は困難なことが多くあります。
一方で、先に述べたように、一般的にはマイナス要素と思われがちな内容であって、採用ターゲットによっては、影響があまりなかったり、逆にメリットになるケースもあります。自社が想定する採用ターゲットに、どのように映るのかを客観的に見ることが大切です。

「労働条件・待遇」
多くは組織戦略、人事戦略に関わる領域となり、大手企業では整備されていることも多く、変更するには相当の時間と労力を必要となります。中小企業においては、採用活動を始めるにあたって経営者の判断などにより、新たに整備できることもあり、比較的短期間で変更可能なこともあります。

「採用活動」
主に採用戦略の領域となるため、企業規模に関わらず採用の目的や採用ターゲットに沿って、即時に改善することがしやすい内容です。ゆえに、採用活動の設計や内容の充実が重要になってきます。

採用力をupさせるためには
冒頭に示した
【採用力 = 企業力 × 労働条件・待遇 × 採用活動】
の中で、即時に変えられるもの、変えやすいものを考える。
また、採用の目的・採用ターゲットにあわせて、メリット・プラスに働くものを抽出する。
まずはこの整理から始めてみるのがおすすめです。

この記事を書いた人

多和田 又一郎